心療内科の専門は、心身症です。これは基本、体の病気で、診察や検査をすれば目に見える結果が出るので、心療内科でなくても、治療をしてもらえます。

 

しかし、もしその発病に、環境や人間関係からくる心理的ストレスが関係している場合、一度治療しても、また同じように発症を繰り返すということがありえます。

 

そんな時、身体的な病気だけでなく、心理面のトラブルをも診てもらえる心療内科は、よりサービスのいい内科であって、とても重宝します。発病の引き金になっている心理的ストレスまでさかのぼって医療的ケア(カウンセリングも含む)を受けることができるので、再び同じような発病を起こす確率がぐっと少なくなります。

 

精神科との一番の違いは、精神科が「心の病気(神経症・精神病)」を対象とするのに対し、心療内科は心身症、つまり「体の病気」を対象としていることです。しかし一方でかぶるところもあります。両者とも「神経症」を診るということです。

というのも神経症は、不安やうつといった精神症状もでますが、一方で肩こりや頭痛と言った身体症状として表現されることもあるからです。神経症の治療にはカウンセリングが一番いいのですが、カウンセリングを勧めてくれるのはきっと心療内科医のほうでしょう。

 

心療内科は、原因不明の体調不良を診る外来

 

ところで、心療内科のメリットは、心身症の診断・治療に限りません。

 

「不定愁訴(ふていしゅうそ)」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?不定愁訴とは、「頭が重い」、「肩がこる」「イライラする」、「疲労感が取れない」、「よく眠れない」といった、何となく体調が悪いという自覚症状を訴えるが、検査をしても原因となる病気が見つからない状態を指します。

 

患者は様々な外来を訪れますが、結局、検査結果で問題が発見されないので、問題なしとされ、診断が付かず、当人は困り果ててしまいます。当人は、診断名を求めて他の科、他の病院を探し歩くことになり、いわゆるドクターショッピングを引き起こすことになります。

 

そんな時にも受診すべきなのが心療内科なのです。「心療内科は、原因不明の体調不良を診る外来」といってもいいかと思います。

 

先の不定愁訴は、心療内科では、「自律神経失調症」という診断名が付きます。そして初診の時まず心理テストをするように指示されますが、それは体調の不良の原因が心理的ストレスに由来する可能性があるからです。

 

不定愁訴を訴える人は基本的には体調が悪くなるので、精神科は考えません。しかし、これらの人の多くが、心理的ストレスの問題を抱えていることがすでに分かっています。したがって向精神薬の処方がよく効くのです。具体的には、精神安定剤(抗不安薬)や不眠があるようなら、睡眠導入剤も併せて処方します。これらの薬が大抵はよく効き、数日で劇的に体調がよくなることもあります。

 

心療内科のいいところは、心身両面の視点から診てくれるところです。それによって、単科の外来ではわからなかった病気の原因と治療が可能になるのです。

 

自律神経失調症と似たような状態に仮面うつ病というのがあります。仮面うつ病は、本来うつ状態を発症しているのですが、それが精神症状としては出ずに、体調不良として表現される病態です。この場合も、本人は体調不良が主症状なので、精神科には行かずに、主に内科巡りをすることになります。

 

このような場面でも心療内科を受診すれば、心理テストの中に抑うつ度テストも必ず入っているので、仮面をつけたうつ病も、心療内科医にかかれば、正体が暴かれるというわけです。仮面うつ病の治療は、根っこにうつ状態があるわけですから、抗うつ薬の処方がメインになってきます。

 

このように書いてくると、自宅の近くに開業の心療内科クリニックがあれば、内科医ではなく心療内科医を主治医としてもつことが得策のように思います。

 

心療内科 ← 内科+心理的ケア

 

また精神科医と比べ、多くの場合心療内科医は、診察時間も長くとってくれる場合が多いです。もともとコンセプトの中に心理療法ということが入っているのですから、医師にはなるべく話を聴いてもらいたいと思っている方(→ みんなそうでしょう)は、やはり心療内科をお勧めします。

 

ただ開業の心療内科クリニックで気を付けなければならないのは、精神科医が心療内科の看板を出している場合があることです。心療内科はサービスもいいし、精神科よりも受診するハードルが低いため、精神科医が開業するときに、心療内科の看板を出すこともあるのです。この場合、精神科医が心療内科医としての修業をきちんとしていない場合もあるので、心療内科専門の医師のクリニックを受診するのが大事です。

 

本物の心療内科医の見分け方ですが、院長プロフィール等がHPにのっていると思うので、そこで医師の所属が日本心療内科学会、日本心身医学会となっていれば、本物の心療内科医です。心療内科とうたっていても、医師のプロフィールが日本精神神経学会所属のみの場合、精神科医が心療内科の看板を出しているとみていいでしょう。順番としては、心療内科を受診して精神科を紹介されるようなら、そこで精神科を受診しても遅くはないのです。

 

 

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