わたしは、およそ3年間で、8人のカウンセラーにカウンセリングを受けました。臨床心理学の教授も含め、そうそうたるメンバーだったはずですが、その体験から分かったことは、自分にあったいいカウンセラーを見つけるのはなかなか難しい、ということでした。
まずはわたしが体験したカウンセリング体験(クライエント体験)で何がうまくいかなかった要因だったのか、について書いてみたいと思います。いま振り返ってみても、そんな特別なことをカウンセラーに求めていたわけではないと思うのですが・・・。
わたしのうまくいかなかったクライエント体験
カウンセリングがうまくいかなかったというのは、面接を受けるメリットが見出せないのでこちらのほうから、カウンセリングを打ち切ったということです。長いところで15回、平均したら、1人のカウンセラーと、大体4~5回位は継続面接をしたということでしょうか。
わたしにとってメリットがなかったというのは、次のようなことです、
1.カウンセラーの人柄はいいが、ただ話をきいているだけ。
2.カウンセラーその人に魅力を感じられなかった。
3.カウンセラーから上から目線の対応をされた。
4.カウンセラーに自分の味方になってもらえなかった。
5.カウンセラーが親身に話を聴いているように見えなかった。
6.沈黙になって困っていても、助け舟をだしてくれない。
この中から3.の体験についてもう少し書きます。
上から目線で接する、クライエントに不誠実なカウンセラー
カウンセラーになるために、クライエント体験をしたいです、と言って初回面接を受けに行きました。ところがやたら上から目線でものを言ってきます、わたしの名前は伝えてあるのに、「あなた」と呼び、会ってまだ1時間くらいしかたってないのに、「あなたはカウンセラーにはなれない」などと断言されました。それで自分を見つめるためにカウンセリングを受けたいと改めて伝えました。すると面接とは直接関係ないことをぶつぶつ言い始めたので、彼の意図がわからず質問をしていると、「あなたはそうやってぐずぐず言う」などと間接的に文句(?!)を言われてしまいました。それでさすがに私もあきれて面接を終了させました。後でわかったのですが、どうもそのカウンセラーは私との継続面接を引き受けたくなかったようなのです。しかしそれを私に率直に伝えず、遠回しに断ろうとしていたのです。
その面接の後、私は非常に嫌な気分になり、2、3日憂鬱でした。わたしにとってそれはクライエントとしてもカウンセラー初心者としても傷つけられ痛手を負う体験となったのです。
師となるカウンセラーとの出会い
どれもうまく行かず、ああ~私にあったカウンセラーは存在しないのだろうか、と途方にくれていたところ、偶然に思いもよらないところから、私の師となるカウンセラーと出会うことになりました。
私はカウンセリングルームを始める前に、トレーニングの一環として高齢者施設での傾聴ボランティアを一年ほどやっていました。そこのボランティア団体が月に1回やっている傾聴の研修会で講師を務めていたのが、そのカウンセラーでした。いいトレーニングを提供してくれるなとおもって、詳しくきいてみると、カウンセラーのための研修も月に一度行っているということで、そちらの方にもお邪魔するようになりました。先生とも順調に信頼関係を築いていって、そしていよいよ、私自身がカウンセリングルームを試運転的にはじめる時に、思い切ってSV(スーパービジョン※)をお願いしたところ快く受けていただき、晴れて私はそのカウンセラーの弟子となったのです。
※スーパービジョンは、対人援助職者(スーパーバイジー)が指導者(スーパーバイザー)から教育を受ける過程である。 指導者が援助者と規則的に面接を行い、継続的な訓練を通じて専門的スキルを向上させることを目的としている。
それから師匠からのマンツーマン指導がはじまりました。師匠のスーパービジョンは一般的に言われているものとちょっと違っていました。一般的には、スーパーバイザーは、教え子にカウンセリングを同時並行してやってはいけないとされているのです。ところが師匠のSVは、SVとスーパーバイジーのカウンセリングを同時にするのです。つまりSVを逐次カウンセリングを交えながらしていくというのです。
SVの場で私はケースに関することだけでなく、自分自身の問題についても思ったことを好きに話すことが推奨されました。師匠は、丹念にその時の私の心の動き・気持ちを聴いていきます。聴くだけでなく、訊くのもとてもうまくて、そのたびに私は自分自身の内面を探っていくことになりました。そしてSVを通して、ケース検討以上に、毎回、私自身が受け入れられ、共感されて、「気づき」を得ていることに気づきました。なんか非常にシンプルで当たり前のことを書いているようですが、こういうカウンセリングが一番パワフル(効果的)であり、結局これが、私がカウンセリングで求めているものだということに思い至ったのです。
「気づき」とは自分の感情や気持ちに気が付いていくことなのでした。そしてそれは共感されることで気持ちを含めた自分自身が受容され肯定されていく感覚なのです。そんな体験ができたのは本当に師匠が初めてなのでした。
私の目指すカウンセリング
そしてやっと私は自分自身のカウンセリングの理想を手に入れることができました。
私の目指すカウンセリングとは、あなた(クライエント)が自分自身の存在を感情・気持ちも含めてそのまま受け入れられるように手伝うことです。それはあなたのより全体的な自己肯定・自己受容を促進することなのだと思います。
そしてこれは、私が実際に師匠からのSVとカウンセリングで、やっと理解でき、実感できたことなのでした。
以上が私の現在までのカウンセリング遍歴です。カウンセリングルームを運営していく上で、うまくいかなかったカウンセリング体験もそしてうまくいっている現在のSV・カウンセリング体験も生かして、あなた(クライエント)のお役に立てるよう努力していきたいと思っています。