心の病(精神疾患)は原因別に、心因性、内因性、外因性、器質因性に分類されます。

 

後者の二つは、治療においてはほとんどカウンセリングと関わりがないので今回のお話からは省きます。

 

心因性の精神疾患は、「心身症」と「神経症」に大別され、内因性の精神疾患とは一般的には「精神病」とよばれるものを指します。大事なことは、心身症、神経症、精神病のどれを診断するかによって、治療方針や方法が異なってくるということです。

 

特に注意しなければならないのは、例えば、本当は、神経症なのに、精神病と診断されて治療をされてしまうことです(こういうことは残念ながら実際に結構あります)。

 

このことで、なかなか症状が治らず、体調がかえって悪くなってしまうこともあります。

 

これらの分類を知って(特に神経症と精神病の違い)、自分はいったいどこに入るのかを知っておくことは、当事者にとってもとても大切なことなのです。

 

神経症と精神病の違い

 

精神病は、主にその発症の由来が遺伝的体質的要因にある病気(=内因性の精神疾患)のことです。これは精神病が脳という臓器の病気(体の病気)であることを示しています。

 

もちろん、気質的(性格的)ななりやすさはありますが、基本的にうまれもった体質の中に精神病の種をもっているということです。

 

それに対して神経症は、その発症の由来が社会・心理的なストレス要因にある病気(=心因性の精神疾患)のことです。

 

神経症は過剰なストレスによる心の悩み(葛藤)の深刻化によって引き起こされる様々な精神症状群のことだといえます。

 

それでは次に精神病と神経症にはどんなものがあるのか具体的に見てみましょう。

 

神経症は、以前はノイローゼと言われていましたが、今は死語化しています。

 

精神病と神経症の分類と種類

 

精神病:統合失調症、躁うつ病、うつ病

 

神経症:不安神経症、抑うつ神経症、パニック障害、広場恐怖、強迫神経症、対人恐怖症、各種恐怖症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、適応障害、解離性障害、身体表現性障害(ヒステリー)

 

こう見てみると、神経症には、様々な病型があることがわかります。

 

しかし、心因性精神疾患という原因の観点から見るとき様々な病型が神経症という大分類に包括されることになります。

 

PTSDは神経症の分類です。そしてその症状においては、まず診断基準を満たすと共に、その他全ての神経症の症状が発現しうるといっていいと思います。

 

すなわち、PTSDで対人恐怖症、PTSDで抑うつ神経症、PTSDで解離性障害、といったように。

 

関連コラム記事:PTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断基準

 

精神病の治療のメインは薬物療法で、薬がかなり効きます。さらに患者の周囲の人たちの理解や配慮による心理的なサポートが基本的な治療方針となります。

 

特にうつ病は、昔は周囲の無理解がよくいわれましたが、現在ではかなりうつ病は認知されるようになりました。

 

うつ病の治療に必要なのは、原則、抗うつ剤の服用と、休養と、そして周囲の人たちからの理解です。そして周囲の人たちとは、家族や友人、職場の人たちのことです。

 

こちらの理解は現在かなり、浸透してきたのではないでしょうか。

 

その他の精神病についてはまた改めて書きたいと思います。

 

関連コラム記事:うつ病の診断を決める9つの症状

 

神経症の治療について

 

それに対し、神経症は、その様々な病型があるとしても、メインの治療は、カウンセリング + 薬物療法 の併用です。

 

薬の処方では、精神安定剤(抗不安薬)に加えて、抑うつ神経症に限らず、抗うつ剤も処方されます。

 

これらの処方の目的は、最低限の症状(不安、過緊張、不眠、食欲不振等)を抑えるためであって、これだけでは根本治療とはなりえません。

 

神経症は、心理的ストレスにより本人の悩みや葛藤が深刻化したことにより引き起こされるものなので、本人の心の問題がなんらかの形で解決されていかないとなかなか回復しないのです。

 

従って、神経症の治療にあってこそ、カウンセリングが不可欠かつとても有効と言えるのです。

 

しかし現実にしばしばみられるは、抑うつ神経症のように、症状が、内因性のうつ病と似ているために、うつ病と診断されて、抗うつ剤をどんどん処方され、それにもかかわらず患者のほうはよくならず、苦しみを訴えるので、さらに薬が増えていくという悪循環です。

 

薬の量が増えていった時に、副作用から来る体調不良に陥ってしまうこともあります。

 

精神科の外来にカウンセリングルームが併設されているところでもなければ、めったに精神科医の方から、カウンセリングを勧める、紹介することはありません。

 

従ってしばらく精神科のみで治療を受けてみて、なかなかよくならない場合は、精神病としてのうつ病ではなく、神経症としての抑うつ症状ではないかと、どこかで自分で判断して、自分からカウンセリングルームを探して、支援を求めることが回復のためには必要だとわたしは思います。

 

ただ軽度の神経症ならば、精神科の外来だけでもほぼ元気を取り戻すことはできるかと思います。またその逆もしかりで、カウンセリングだけでも十分に回復可能です。

 

PTSDのような重症神経症は、カウンセリング + 薬物療法で対処していかなければ回復は難しいのだと思います。

 

もし精神科・心療内科に通われているなら、自分の問題が、心因性のものなのか、内因性のものなのか、医者任せにせずよくよく考えてみることも大切なことかと思います。

 

今回の記事がそのための参考になれば幸いです。

 

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