こんにちは、下村順一です。
「経験は私にとって最大の権威である」
これは来談中心療法の創始者C.ロジャーズの言葉です。
この言葉は私にとってとても役に立っているものなので、
あなたにもご紹介しますね。
経験はわたしにとって最大の権威である
ロジャーズがいうには「経験」とは、自分の中で起こっていることを意味します。それには、意識して気づいていることもあれば、まだ気づいていないけど、潜在的に起こっていることも含まれます。
例えば、空腹、というのは、いまわたしにとって起こっていることです。それをはっきり自覚している場合もあれば、何かに夢中になって気づいていない場合もあります。でもいずれも空腹は、今のわたしの「経験」(わたしの中で起こっていること)となります。
そしてロジャーズに言わせると、これが自分にとっての最大の「権威」だというのです。権威とはどういうことでしょうか?
権威とは、判断の拠り所となり、それに従わなければならないものです。
例えば、何かスポーツを始めようとすれば、コーチは権威です。私たちはどんなスポーツを始めるにも、まずそれを習熟している人にトレーニングの仕方を習わなければなりません。コーチがいないとなかなか上達していきません。全部自分流でやってしまうと一人よがりなものになり、それでは結果をだすことはまずないでしょう。
だからまずは、コーチの言うとおりにしなければなりません。言うとおりに従うべきもの、それが権威です。
では、自分自身にとっての権威はなんでしょうか?つまり自分が生きていく上で迷ったり、苦しくなったりしたときに、何を拠り所にして判断すればいいのでしょうか。コーチに訊くべきか、大学の先生に訊くべきか、あるいは偉人たちの書いた本に答えを求めようとすることもあるでしょう。
このような問いに、ロジャーズは先の言葉で答えているように思います。つまり、何かに迷ったり苦難に出会ったら、自分自身の経験に聴けということです。経験とは過去の体験のことではありません。「いまここで自分自身に起こっていること」です。そこに答えがあるといっているのです。
経験は常に自分自身に対して、メッセージを送っています。
2年ほど前のこと、わたしは前職場でかなりきつい状況におかれていました。小人数の職場で近くに座っている同僚とそりが合わなくて、もうこの職場、限界かなと感じていたのです。
しかし一方で、わたしにとって初めての正規職員の仕事、待遇もいいし、福利厚生もしっかりしているし、入社した時は、ここで定年まで勤めようとおもっていました。3年ほど前には自分の家族もできていましたし、家族のためにもここで頑張ろうと思っていたのです。
しかしどうしても同僚とのコミュニケーションがうまくいかず、同僚に対するストレスが溜まっていきました。正直辞めたいと思いました。しかし、人生で最初で最後かもしれない正規職員にはとても未練がありましたし、家族や親ががっかりするのをおもうと、決断しかねていました。自分がなんとかがんばればすむことなのだと。
ある出勤日の朝、わたしは職場の自分の席に座りました。ちょっとしてから今度は例の同僚が入ってきました。そして彼が入ってきたと同時にわたしは気分が悪くなりました。そしてその時はじめてわたしは、ああ、この職場ではもうやっていけないなと観念する気持ちになったのです。その時は、わたしははっきりと、その同僚の姿を見て、わたしが経験していることの意味を理解したのです。
職場を辞めた方がよかったのかについては、理屈ではやはり頑張った方がよかったとは思いますが、それ以前に、わたしが倒れて、また重度のうつ状態にでもなってしまっては元もこもないので、あの時の決断に後悔はありません。またあの職場を辞したからこそ、年来のやりたいとことであった開業カウンセラーをやる決意もでき、今まさにそのステージに立てたのです。
経験からのメッセージ(意味)は私にとっての判断の拠り所となるような権威であり、権威とは従わなければならないものなのです。ロジャーズに言わせるとそれは自分の外にあるのではなく、内にあるというのです。
人にアドバイスを求める時は、訊くであり、自分の経験のメッセージをきくのは、聴く(傾聴)なのです。自分の経験が権威とは、今ここで経験していることを傾聴し、そのメッセージに誠実に従うということなのです。
ロジャーズの言う「経験は私にとって最大の権威だ」という言葉は、行き詰まった時の判断の拠り所を示してくれているという意味で、わたしにとって大変役に立つ言葉ですが、あなたはどのようにおもわれたでしょうか?。
しかしそれでも何を優先したらいいかわからなくなったら、ぜひカウンセリングにいらしてください。ご自身の経験していることの意味(メッセージ)を聴くお手伝いをさせていただきます。