「カウンセリングにおけるトラウマ治療の王道」というテーマで、ぴったりのとてもうまくまとまった文章があるので、きょうはそれを紹介して、わたしの感想と考えをお話したいと思います。
幸い、トラウマは、誰かわかってくれる人がいて、きちんとサポートを得られ、心身の余裕が与えられれば、時間がかかるものの、少しずつ癒えていきます。安全な場所で、共感性をもったよい聴き手に話をきいてもらうことで、気持ちの整理がついていきます。(『トラウマ』、宮地尚子著、岩波文庫、2013年)
あなたが楽になるための支援
わ~、これは正にわたしがやろうとしていることだ、と思いました。つまり、安全な場所を提供し、共感的に相手の話を聴く、これが傾聴の基本です。傾聴の段階ではわたしはなるべくあなたを理解しようと努めます。そして聴き手に理解され、わかってもらえたと思うと、すごくほっとして、心に余裕ができるのです。
しかし傾聴だけだと基本、話を聴くだけなのでカウンセリングにはまだなりません。カウンセリングでは傾聴プラスで、相手が楽になるような「関わり」を対話の中で積極的にしていきます。関わりというのは、主に質問すること、そして、指摘することです。
質問するとは例えば、あなたが「ある日、教室に入ったら男子生徒にからかわれました」というエピソードをわたしに語ってくれた時、わたしは「その時どんな気持ちがしましたか?」とあなたの気持ちをきいてゆきます。あなたはそれに答えようとすることによって、その時の自分の気持ちがはっきりしていきます。自分の気持ちに気づけることで、次同じ状況になっても、ショックでどうしていいかわからないという段階から、今度はより冷静に以前とは違った対処をすることができるようになるかもしれません。
指摘するとは、あなたの話の中でつじつまの合わないところを指摘したり、話されたことにどういう意味があったのか、カウンセリングの理論やわたしの体験から解釈して提案することです。
例えば、「あなたは『もう大丈夫です』というけれど、とても不安そうに見えますが、いかがですか?」と言葉と態度の不一致を指摘したり、「あなたは自分ではダメだダメだと言いますが、わたしにはあなたが随分努力されているように思いますが、いかがですか?」といったように、あなたの言葉と事実の不一致を指摘したります。
自分の話していることの矛盾点やつじつまの合わないところを指摘されることは、自分の考え方の癖や傾向に気づくいい機会になることが多いのです。自分自身のありようを知ることで、現実が今までとは違って見えてくることもあるのです。
このように傾聴しながら随時、関わりをしていくことで、あなた自身が気づきを得たり、自己洞察が深まっていくのを支援します。
「支援的な関わり」とは、あなたが少しでも楽になれるためのものです。
トラウマ体験があなたの人生にとって意味あるものになる
混乱していたトラウマ体験の記憶が、少しずつ整理されていくと、それに対する気持ちやその時の状況によって色づけられた過去の記憶(大抵はネガティブな記憶)がより客観的なものになっていき、そして最後には自分自身の人生にとって意味あるものとして捉えられるようになっていきます。それもまたあってよかったと思える日が来ます。
(ここまで来るにはかなり時間がかかりますが(^^;)でもその可能性は生きている限りなくなりません、絶対に!)
トラウマ体験がその人の人生の中で意味あるものとなることによって、自分が肯定できるようになるのか、自分が肯定できるようになったから、トラウマ体験が自分の人生の中で意味あるものとなるのか、コロンブスの卵のような話ですが、そういう事態が、まさに回復であり人としての成長なのではないかと思います。
わたしの場合は、中三の時のいじめ体験で、加害者に屈服したという出来事が受け入れられなくて何年にもわたって苦しみました。そのことはいまでは過去の出来事になったかというとそう簡単には割り切れない思いはあります。しかし、その出来事のために自分を否定するということはなくなったかと思いいます。そしてわたしはいまある自分を大事に思っていて、大切にしたいと思っていますが、それはあの屈伏体験も含めた自分を大切にすることなのだと思っています。
あってはならなかったトラウマ体験・出来事がいずれあなたにとって、意味のある人生の出来事になっていきますように。