拡大

 

カウンセリングでは、クライエントに何らかの変化をもたらすことが目標であるとよく言われます。

 

例えば、不登校児が学校へ行けるようになるといった行動の変化、対人恐怖で人から嫌われるのが怖いという人が、全ての人から好かれなくてもいいと考えられるようになる認知(考え方)の変化などよく言われることです。

 

しかしわたしの考えるカウンセリングにおけるもっとも重要な変化とは、それまで否定していた自己を肯定できるようになるという自己肯定の変化です。これは実は上に挙げたような変化においても多少なりとも起きている変化だと思われます。

 

わたしのいじめトラウマ

 

わたしは中三の時に10か月間だけ、いじめにあいました。わたしにとっては大変つらいものでした。

 

そしていじめ加害者から植え付けられたのは、お前はだめ人間だ、ということでした。

 

中学卒業後はそのいじめ加害者とあうことはありませんでしたが、それでも彼から植え付けられたこと、自分はダメなやつなんだ、という囚われから逃れることができず、ずっと自分のことを責めて、軽蔑してきました。

 

自分がいじめをうけて彼に屈服したことはわたしにとってどうしても認められない現実でした。わたしは屈服する中で自分がだめ人間だということを自分に認めてしまったのです。

 

うなだれる

 

自己理解の拡大

 

しかしそれから14年の月日が流れ、ついに私にも変化の時がやってきました。

 

それはどんな変化かというと、確かにわたしは14年前の中三の時に同学年の少年に打ち負かされ、だめ人間となってしまいました。

 

その過去は決して消えるものではありません。しかしこれからはそんなダメな自分も含めて自分を愛そう、他に誰も代わりができないかけがえのない自分自身なのだから、そんなダメな弱いところも含めてこれからは自分を愛そう、大切にしよう、慰めてあげようと思うようになったのです。

 

わたしはこの自己肯定の変化を「自己理解の拡大」と呼んでいます。

 

ここではじめて、長きにわたる「自分いじめ」という確執が終了し、わたしとわたし自身とのやさしい関係の時代がはじまったのでした。

 

もちろんいまでも不安や自分を責めることも少なからずあるけども、それでもやっと自分自身を受け入れることができるようになったのです。

 

この根本的な変化によって次のような変化が続いておきました。

 

遷延化していたうつ状態の緩和、対人緊張の緩和、そして自分のトラウマのことを誰にでも過去の出来事としてまた単なる事実として話せるようになったのです、いじめられた当初は、いじめ体験のことは一生かけて秘密にしていかなければならないと思っていました。

 

自己との和解

 

はじめの話に戻すと、わたしにとっての根本的変化とは、中三以降14年間にわたって肯定できなかった自分、すなわち「負け犬のダメ人間の自分」という現実を、受け入れ肯定できるようになったということです。

 

それは私にとっては「自己との和解」という出来事でした。

 

わかい

 

この自己との和解によって一番大きかったのは、なによりも自分自身の内に安心感をもてるようになり、それまで感じたことのなかった幸福感と感謝の気持ちをもてるようになったことです。

 

そしてその感覚はいまもわたしの根底において流れています。

 

カウンセリングがこのような変化にどこまで貢献できるかわかりませんが、否定的要素も含めたあるがままの自己自身の肯定(自己理解の拡大)、そして自己との和解につながるような支援ができれば、少しでもその変化の助けになることができればとおもっています。

 

トラウマサバイバーとしてのわたしにとってもっとも重要な自分の変化とは、自己肯定の変化・拡大でありました。わたしがこれからしていくカウンセリングがカウンセリングに来ていただいたあなたのそのための一助になることを願ってやみません。

 

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